企業の人事担当者・卒業生に聞く/公務員・団体職員

企画、広報、まちづくり… 大学で身に付けた力を活かせる公務員という選択肢

神戸市役所

写真左から人事担当者の粟田 峻平さん、卒業生の津賀 恵さん。神戸市役所本庁舎24階サテライトオフィスにて

兵庫県の県庁所在地・神戸市の行政機関。明治の開港以来、新しい気風や多彩な文化を取り入れながら独自のブランドを確立し、国際都市として発展を遂げてきた神戸において、都心や拠点駅周辺の再整備や里山の再生など、バランスのとれたまちづくりを進めている。
https://www.city.kobe.lg.jp/

2023年3月掲載


豊かな発想を持った「デザイン力」のある人材の採用に力を入れる

粟田 峻平さん
粟田 峻平さん

神戸市役所
人事委員会事務局任用課
担当

係長
三原 涼太さん

神戸市では、2025年までの新たなまちづくりの方向性として「神戸2025ビジョン」を策定しています。めざしているのは、豊かな自然環境、国際性、多様性、芸術文化といった神戸が持つ本来の強みを磨きながら、最新のデジタル技術なども活用し、持続可能な社会を築くこと。この目標を実現するためには、従来の公務員像にとらわれない多様な人材を集めたチームの運営が不可欠となります。こうした思いを反映し、私たちは2019年度より「デザイン・クリエイティブ枠」という新たな採用枠を設置しました。

神戸市役所は、豊かな発想を持った「デザイン力」のある人材の採用に従来から力を入れてきました。多摩美の卒業生を含め、「デザイン・クリエイティブ枠」で採用した職員には、特にこの力を発揮してチームのなかに新たな視点をもたらし、周囲を巻き込みながら神戸市全域の活性化に貢献してもらうことを期待しています。


地域や企業のエネルギー対策を促進し、脱炭素の取り組みと市民の方々とをつなぐ

津賀 恵さん
津賀 恵さん

2018年|大学院彫刻修了

神戸市役所
神戸市環境局環境創造課

神戸市環境局の環境創造課に所属し、「地球温暖化の防止」という大きなテーマに対して、チームでさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。職場のチームの主な仕事は、地域や企業のエネルギー対策を促進し、脱炭素の取り組みと市民の方々とをつなぐことです。市内企業への再生可能エネルギーの導入を促進するとともに、大学生や小中学生を対象とした地球温暖化に関するイベントも実施しています。今年度複数開催したイベントでは、子どもたちからアイデアを募集するとともに、神戸市の取り組みについて知ってもらう機会にもなっています。

私は修士課程を修了後、自身の創作活動を続けるなかで、地方自治体の取り組みにおいてもクリエイティビティが重要なのではないかと思っていました。芸術分野の知識や技術には、多くの人々の生活を豊かにできる可能性があると考えたのです。そんななか、神戸市が「デザイン・クリエイティブ枠」を新設するという情報を知り、そのビジョンに強く共感して応募することを決めました。

アイデアが予想外に変化するのは、チームで仕事をする公務員ならではの魅力

神戸市役所に勤めるなかで知ったのは、チームで仕事をすることのおもしろさです。もちろん、多摩美でもグループワークはありましたが、創作活動は基本的に個人プレーの世界です。しかし、チームで動くことの多い現在の職場では、自分の意見に対して何らかの反応が返ってきますし、「あなたのおかげで助かりました」という言葉をもらうこともあり、それが励みになっています。また、多様なメンバーの視点が集まることで、ひとつのアイデアがどんどんブラッシュアップされていくところにも、チームならではの魅力を感じています。

大学の講評では、他の人がつくった作品をよく観察し、自分なりに理解したうえでコメントすることが求められました。講評を通して、今まで親しんでいなかったテーマにも接近する経験は、自分の興味関心を拡げてくれたように感じています。入庁前はほとんど知識のなかったエネルギー分野の仕事に関わるなかでも、楽しみながら働くことができているのは、そのような経験が糧になっているようにも思います。

私がそうであったように、美術大学に通う学生は公務員という選択肢を考えもしないと思います。しかし、神戸市には「デザイン・クリエイティブ枠」があり、芸術分野の強みを活かしながら、やりがいを持って働いている職員がたくさんいます。多摩美は、先生や友だちとの交流を通じて、自分の知らなかった情報と出会える場所です。後輩の皆さんには、大学のインフラを積極的に活用し、幅広い情報に触れることで、将来の可能性を広げてほしいと思います。