株式会社
コナミデジタル
エンタテインメント
背景やキャラクター、UIデザインなど
重要なポジションに多くの多摩美出身者
エンタテインメントコンテンツをモバイルゲームや家庭用ゲーム、アーケードゲーム、カードゲームなど多面的に展開し、IT技術やネットワークを活用した新しい遊びを提供する。前作の『ウイニングイレブン』含め全世界でシリーズ累計販売1億本を超える『eFootball』をはじめ、国内外の市場でグローバルに展開中。https://www.konami.com
取材日:2022.11.21、2019.1.22

西川 優希さん
2019年|情報デザイン卒
『ウイニングイレブン』の後継タイトル
『eFootball™』のUIデザインを担当
ゲームをわかりやすく遊んでもらうための画面を設計・構成する「UIデザイン」のチームに所属し、『eFootball™』というサッカーゲームを担当しています。このゲームは元々『ウイニングイレブン』として親しまれてきたゲームで、毎年新作が発表されてきた継続タイトルです。チームを選んでもらうときのわかりやすさや、どのようなグラフィックにすれば見やすくなるかなどを日々考えながらデザインしています。
世界のユーザーがプレイしており、18言語に対応して制作しています。選手名など表記の長さが言語ごとに異なるので、UIデザインも一番長い表記に合わせて設計するようにしています。使用するアイコンなども、日本と海外では文化や慣習が異なるため、どのようなグラフィックであれば伝わるかを考えなければなりません。例えば、初心者モードということを視覚的に表すとき、日本であれば車の初心者マークを添えれば多くの人に理解してもらえるのですが、海外では通じません。国によっては使ってはいけないマークがあるなど、世界で発売されるタイトルだからこそのUIデザインが求められます。学生の頃とはデザインの質が変わってきたと実感しています。
『eFootball™』は、選手を育成する遊び方もあり、パスやドリブルなど選手の能力を細かく調整することができます。そうした複雑な操作や設定もUIデザインでわかりやすく解決しなければなりません。ユーザーが難しいと思わないように、使いやすく、スムーズに遊べるようなデザインをいつも考えていますが、デザインで苦労した画面が、何の違和感もなく遊んでもらえていたときは、「がんばってよかった!」と思いましたね。
多摩美で培った「デザインの説得力」は仕事をする上でも不可欠
高校生の頃からゲームが好きで、将来はゲームをつくる仕事に携わりたいと考えていました。それで多摩美に入ったのですが、実はあまり絵が得意ではなくて(笑)。ゲーム制作に生かせるスキルはないかと考えながら情報デザインコースで学ぶなかで、UIデザインに出会いました。
情報デザインコースはプレゼンなど人前で話す機会が多かったので、そこで培った説明力、コミュニケーション力も、今の仕事で生きていると感じています。ゲーム制作はさまざまな分野のクリエイターが関わっているので、専門が異なる人にもわかるように説明しないと、意図していない画面ができあがってしまう恐れがあります。学生時代から相手に理解してもらうための説明を意識してきたことが、社会にでても役立っていますね。
学生時代はいろんなことに触れてみることが大切だと思います。とくにデザイナーは流行を敏感に察知し、さまざまなデザインを意識して見る必要があると思います。私も日頃から観察眼を養うことを心がけています。(2022.11.21 取材)

伊藤 優実さん
2018年|統合デザイン卒
「ゲームをゼロからつくりたい」と
入社前から新規開発の部署を志望
ゲームの新規開発の部署に所属し、現在は人気タイトルの新規のゲームアプリの制作に関わっています。ゼロからゲームを設計していく場合、一度チームに加わると3〜4年開発が続きます。私はおもにUIデザインを担当していますが、チームにはプロデューサー、ディレクター、プランナー、プログラマー、3Dデザイナー、イラストレーターなど多様なクリエイターが集まっています。
職種関係なく意見を交わしながらゲームをつくっていくプロセスは、いろんな領域に触れ、いろんな先生方と話をした統合デザイン学科での学びと似ていると思うことがあります。学生時代の私のポートフォリオは、プロダクトデザイン、CGデザイン、UIデザイン、ウェブ制作、イラストなどさまざまなジャンルの作品であふれ、それがこの仕事に就くうえで武器にもなりました。入社前からいろんなことにトライしたいという気持ちがあり、「ゲームをゼロからつくりたい」と志望しました。
統合デザイン学科で培われた柔軟な発想力を活かす
以前、3Dのフィールド上にタイムリミットの時間を表示するUIをデザインしたのですが、モチーフを腕時計にしたところ、そのアイデアを評価してもらえたことがありました。時間=時計という風に発想を広げていったのですが、例えば画面上にボタンをひとつ用意するのでも、どんな感触であればユーザーは触りがいがあるだろうかと考え、水のような触り心地ならどうか、建築で用いられるボタンではどうかなど、幅広く思考を巡らせます。そのような柔軟なアイデアの出し方は、統合デザイン学科で学んだからこそ身についた力だと思います。大学の4年間はどのように新しいアイデアを出すかを考え続けた時間だったので。自由な発想でゼロからデザインしたゲームがたくさんの人に遊んでもらえるのは、クリエイター冥利に尽きますね。
自分の価値観を、自分の言葉で表現する
学生のときから、そして仕事をするようになった今も、デザインをするうえで大切だと考えているのは、「かっこいいとは何か?」「かわいいとは何か?」ということを自分なりに定義して、自分の言葉で表せるようにすることです。例えば、UIデザインの場合では、ゲーム画面のボタンの配置や使用する色に対し、「なぜそうしたのか」、その理由をしっかりと伝えるようにしています。言葉でも伝えられることが必要だと感じています。(2022.11.21 取材)

リードデザイナー
亀井 智之さん
2001年|油画卒
リアルを追求するため
空撮や海外現地取材、JAXAの
協力を得て制作した“ウイイレ”
背景デザインのリードデザイナーとして、『ウイニングイレブン2016』から携わり、主にサッカースタジアムのデザインを手掛けています。実在するものなので、実際に出向いてスタジアムの構造や質感を調べ、計測を行って制作します。2018年3月にはドイツに行き、3Dデータスキャンを行いました。スタジアムにレーザーを飛ばして、実際の寸法を全部図るんです。本物に近いリアルな感じをどう生み出すか。その方法はすべて、自分たちで考えて決めます。今回は上空からのカットを作るために、ヘリコプターをチャーターして撮影しました。すでに10ヵ国は取材に行っていますが、こうした本格的な手段を使ってリアルを追求できることは、デザイナーにとって最上のよろこびですね。
山脈がかなり特徴的なスタジアムも手掛けたのですが、JAXAが所持する地形のデータが面白いのでぜひそれを使って作りたく、JAXAより使用許可を頂いて作成しました。もちろん、単にリアルな作品を作ることだけが目的はありません。コストをかけた分「利益を生む」ことが大前提ですし、想像して作るよりちゃんと見て作った方が短期間で制作できるという効率面、また「JAXAのデータを使った」という事実が宣伝効果につながることまで見越して計画し、社内プレゼンが通って、初めて実現するのです。
想定する1番の位置を常に超える意識で
制作現場では週に一回、皆が作ったものを見せ合うレビューの場を設けています。デザイナーは「見せる」という場があると、物凄い能力を発揮するんですよ。みんな、何か人を驚かせるものを見せたいという思いが強いので(笑)。プログラマーなど、異なる職種の人にも意見を聞くと、的を射た鋭いところを突かれることが多いんです。こういった自分の作品を客観視する習慣が多摩美では日常的にあって、講評会で描いた絵を評価し合う環境と同じですよね。自分の癖は自分で気づけないので、客観的に指摘し合う方が効率が良いのです。また、多摩美では「ここまでやれば1番になれる」というところまで描いても、同等もしくはそれ以上の人が必ずいることを知ったことも大きかった。社会に出るとさらにシビアで、「他社より更にいいもの作ろう」なんて当然の世界。想定する1番の位置を常に超えることを意識するようになったのは、多摩美での経験があってのことです。
動画サイトに上げれば何百万という再生回数に
私たちが手掛けたタイトルは、動画サイトに上げれば再生回数が何百万と伸びますし、国内外から注目され、世界中からいろんな声を聞くことができます。こだわった部分を褒めてもらえると嬉しいし、すごく面白くてやりがいがあります。現地取材で本物に触れたり、3Dスキャンのような新しい技術を取り入れたり。それを仲間と共にワクワクしながら作れる人には、本当に楽しい世界だと思います。学生の方は、怖がらずに作ったものを人に見せ、評価をもらって分析し、良し悪しを客観的に分析するという癖をつけてほしいですね。また、その評価を言い合える仲間をぜひ作ってほしい。学生時代も社会に出てからも、そんな関係を築けることはすごく大切なことだと思います。(2019.1.22 取材)
※掲載者の所属などは記事公開時のものです。