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アートとデザインを越境し、新たな価値を提案する全学科横断型コンペ「TUB showing 2023」展を開催


12月4日から24日まで、多摩美術大学TUB(東京ミッドタウン・デザインハブ内)で、アートとデザインの領域を越境した、美術大学である本学ならではの公募制の企画展「TUB Showing 2023」展を開催しています。

本賞は初めての学内全学科横断型の公募制コンペティション企画で、今回のテーマは「Re-◯◯◯」。審査を通過したファインアート系、デザイン系の学部生、大学院生が出品した49作品を一堂に展示しています。各作品の共通テーマの解釈の仕方と、デザインとアートの作品アプローチの違いを鑑賞しながら、未来のクリエイティビティの可能性を探ります。

12月10日には会場にて古谷博子教授(版画専攻)、野村辰寿教授(グラフィックデザイン学科)、尾形達准教授(プロダクトデザイン専攻)、家村珠代教授(芸術学科教授)による審査会が行われました。厳正なる審査の結果、大賞、優秀賞、審査員賞等の各賞が選出され、授賞式と、審査員の教員と出品した学生たちによる交流会が行われました

受賞者、および受賞作品

作品名「 」内は共通テーマ受賞者
大賞槿
「Re-cycle」
YANG ZHUO(大学院彫刻1年)
優秀賞tama boogie-woogie
「Re-session」
studio JACA(多摩美術大学ジャンベ部所属有志)
優秀賞また春に会いましょう
「RE-MEET」
ZHAO YU(大学院彫刻1年)
審査員賞(古谷博子賞)Receipt→Reminder
「Re-minder」
王璠/大学院グラフィックデザイン1年、Gao Fei/大学院版画1年
審査員賞(野村辰寿賞)scene
「Re-seen」
山田明理(グラフィック4年)
審査員賞(家村珠代賞)Tissue Ball
「Re-born」
柳佳弥(プロダクトデザイン2年)
審査員賞(尾形達賞)ソウちゃん
「rebirth」
Song shuting(工芸4年)

授賞式に先立ち、永井一史 統合デザイン学科教授・TUBディレクターより総評、コメントがありました。

「TUBは、デザインとアートの持つ創造性や美意識を社会とつなぐ機能を持つ場として開所した。学生の作品を社会とつなぐ取り組みとして本企画展を開催したところ、たくさんの学生が応募してくれたことに感謝したい。学生から作品を直接応募してもらう公募展は初めての事で、アートとデザインの二軸が融合するこのような展示はあまり例が無く、貴重で画期的な取り組み。今後も継続して行きたいと考えている」

続いて、審査員を務めた先生方からも、「TUBでの催しらしい、表現の幅とユニークさを感じるコンペだった(野村教授)」「八王子とも上野毛とも異なる景色があるTUBで、これからもこのような横断的な取り組みがあったら良いと思う(古谷教授)」「楽しく審査した。ファインアートとデザインとを横断して作品を作ることに改めて意義を感じた(家村教授)」「わちゃわちゃしていて良い。ゲーム作品の横には彫刻作品、その隣にはプログラミング作品と、多摩美を凝縮したような展示。TUBで行う催しとして意義深い(尾形准教授)」との総評が寄せられました。

授賞式の後、展示会場では学生同士互いの作品について意見を述べあったり、審査員の先生から自作について講評を頂くなど、交流を深めました。

各賞受賞作品と講評


<大賞>
YANG ZHUO(大学院彫刻1年)
「槿」|3DCG 作品尺:10分
共通テーマ:Re-cycle

審査員コメント
古谷教授:
「重いテーマを凌駕する作品性、クオリティー。自国の難問をテーマにしながらも非常に美しい作品に仕上がっている。」
家村教授:
「一部に色が付いているがほぼ全編モノクロのアニメーションに言葉が沁みてくる。重い内容だが、映像は美しく、未来はきっとあるという作者の思いを作品から受けた。」

学生コメント
「初めてすべてCGでの制作に挑戦した。中国での出来事や生い立ちなど日本で発信するのも初めてだったが、認めてもらうことが出来て嬉しく思う。これからも頑張りたい。貴重な経験をありがとうございます。」

  

<優秀賞>
studio JACA(多摩美術大学ジャンベ部所属有志)
伊藤恵理菜、伊藤大桜、進藤有輝、高橋李空、前田直輝(日本画2年)、大多田茉莉花(油画2年)、上原理恵子(情報デザイン2年)
「tama boogie-woogie」|アニメーション 作品尺:2分49秒
共通テーマ:Re-session

作品説明
「このアニメーションは、ジャンベ民族楽器部のメンバーで作成したものです。ジャンベ部の公演時、他団体との転換時間に紹介動画を流すため、このアニメーションを作ることになりました。最後に表示されるSTARTの文字は、これから生演奏が始まるという合図です。複数のメンバーの、各々のアニメスタイルを崩すことなく一つのアニメーションとして成立させています。序盤の、電車横からのカットで個人の絵柄を出すだけでなく、そこからの展開として一つの流れに持っていくことで、全体のまとまりと、ストーリー性を持たせました。」

評価コメント
野村教授:
「多摩美のためのスペースであるTUBで、今回のコンペティションのコンセプトにも合った作品。手のかかるアニメーションを学科横断で協同的に作り、楽しさがあふれていて大変良い作品。」

  


<優秀賞>
ZHAO YU(大学院彫刻1年)
「また春に会いましょう」|木彫
共通テーマ:RE-MEET

作品説明
「今回は大きめな壊れた座り姿の若い女性像を作りました。胸から両腕と膝に広がる空洞は、人生で失ったモノを象徴します。愛は私たちが最初に世の中で学んだことです。しかし、成長する過程で、必ず失ったり得たりします。失ったモノを背負って前に進むと、その過程で新たな愛を見つけ、新たな血肉が生まれます。今回の物語の主人公は私の友達です。彼女は大切な人を何人も失ったのです。彼女は夢の中で、会いたくても二度と会えない人たちが笑顔で「また春に会いましょう」と言ってくる夢を見たと話してくれました。彼女は泣きながら目を覚まし、それ以来、春がとても気になっています。」

評価コメント
尾形准教授:
「存在感があり、同時に繊細で、空間に映える作品。コンペティションのテーマである「Re-〇〇〇」にも寄り添っている。「Re-〇〇〇」と言われると、ついつい大きな社会背景やモノのまわりから設定しがちだが、この作品には内面的でナラティブ(語り手自身が紡いでいく物語)な中にある「Re-」を感じた。」

  


<審査員賞(古谷博子賞)>
王璠/大学院グラフィックデザイン1年、Gao Fei/大学院版画1年
「Receipt→Reminder」|リトグラフ
共通テーマ:Re-minder

作品説明
「レシートは私たちの日常生活に浸透しているものである。消費をする時、必ずさまざまなレシートが生まれ、レシートを保存することは無意識な行動となっている。一方、レシートは私たちの生活を記録し、その日の気分を思い出す手段にもなる。しかし、レシートに書かれた文字は記憶と同じように時間とともに色あせていく。本作品は作者が来日してから保存したレシートを整理し、その日々の思い出を残した。作品を見る方に共感を呼び起こしたい。」

評価コメント
古谷教授:
「作品を通して留学生の生活が見える。ただ見えるだけでなく、作品としてきれいに残すというところが興味深く評価のポイントにもなった。」

  


<審査員賞(野村辰寿賞)>
山田明理(グラフィックデザイン学科4年)
「scene」|ミクストメディア
共通テーマ:Re-Seen

作品説明
「人は現実だけで生きているのではない。写真の風景に見えない風景を重ねて、新しい旅に出る。」

評価コメント
野村教授:
「このアワードのコンセプトに合う、メディアを越境したユニークな作品。写真に着彩する、という手法で作られている作品だが、どのように作ったのかを考えながら鑑賞する楽しみもある。」

  


<審査員賞(家村珠代賞)>
柳佳弥(プロダクトデザイン2年)
「Tissue ball」
共通テーマ:Re-born

作品説明
「バスケットボールを再利用してティッシュケースを制作した。一般的なティッシュケースとは異なり、バスケットボールの形をしているため、今までになかった使い方が主に二つある。一つ目は、ティッシュを使いたい人にパスをしてティッシュを渡せることだ。例えば泣いている家族や友達にティッシュを使いなとTissue ballを投げて送る。この「パスをする」という行為が人と人を繋げ、パスを通して感情を共有する役割を持つのだ。二つ目は安心感だ。丸いフォルムをしているため、ぎゅっと抱えても痛くないし体にすっぽりと収まる。悲しい時など何かをぎゅっと抱きしめて涙を流したい時にはピッタリだ。」

評価コメント
家村教授:
「使わなくなったバスケットボールにファスナーを付けて穴を開け、ティッシュケースとして新たに使えるようになっている。泣いている時にこのTissue ballを「涙を拭いて」とパスされる。するとふにゃっ、とした感触を感じて、泣いている場合じゃないと思える。製品レベルの完成度でもあり、今の時代に必要な、嬉しくなるような作品。」

  


<審査員賞(尾形達賞)>
Song shuting(工芸学科4年)
「ソウちゃん」|陶
共通テーマ:rebirth

作品説明
「「ソウちゃん」という作品は工芸学科陶専攻4年前期課題2の自由制作である。私のパンダ人形を作るきっかけは子供の時に撮った不思議な写真を見たから。写っているのは顔だけ出したパンダ服を着ていた自分だ。パンダ服を着た私はとても滑稽に見えた。当時は恥ずかしくて、リラックス出来なかった気分で写真を撮った。その時は逃げ出したかったが、大人になった今この写真を見ると、とても微笑ましく、日常のユーモアを感じた。しかし、私は子供の頃に戻りたいのではなく、またパンダ服を着たいのでもない。生活に対する態度は生まれつきの気軽で、どんな物事にもユーモアのある態度で対応できる架空の生き物「ソウちゃん」を創造したい。」

評価コメント
尾形准教授:
「審査中もこちらがホッとするような作品。しかしかわいいパンダ、というだけでなく作者が子供のころを思い出して作られた、ストーリー性のある作品。」

TUB 第32回企画展「TUB showing 2023」

日程2023年12月4日(月)-12月24日(日)11:00-18:00 会期中無休
入場料無料
会場多摩美術大学 TUB 東京都港区赤坂9-7-1
ミッドタウン・タワー5F(デザインハブ内)
主催多摩美術大学 TUB

  

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