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テキスタイルデザイン専攻の学生が宮本亞門さん演出の『午後の曳航』のマスク製作に挑戦


三島由紀夫の同名小説を原作とし、宮本亞門さんが演出を務めたオペラ『午後の曳航』が、11月23日から26日まで東京・日生劇場で上演されました。この舞台において、物語の重要な役割を担う登場人物である少年たちが被るマスク製作プロジェクトに、テキスタイルデザイン専攻1年の学生44名が挑戦しました。

同専攻は、布全般を指す「テキスタイル」をデザインするための知識や技術、創造力を学び、世界のあらゆるテキスタイル業界で活躍できる人材育成を行っています。

劇中でマスクを被る少年たちに近い世代の学生たちがマスクを製作することでリアリティーある表現や、学生の大胆かつ自由な発想、創造的、独創的で多彩な表現力が少年たちの複雑な感情表現の一部を担うことを期待され、本公演では衣裳コーディネーター*を務めた、大学院美術研究科デザイン専攻修了で衣裳家の武田園子さんの紹介から本プロジェクトがスタートしました。

*衣裳コーディネーター…当オペラでは、衣裳の素材提案、型出し、衣裳合わせ、衣裳製作スタッフの選定など、衣裳に関わる全ての工程に携わる役割を指す

マスク製作プロジェクトの始動

マスク製作に向けて、プロジェクト初日の9月13日に、オンラインミーティングが持たれました。ミーティングでは、同公演の演出の宮本亞門さんと、武田園子さんより、本プロジェクトやオペラの原作、舞台演出の説明などが行われ、学生たちにマスク製作のイメージや材料が共有されました。

宮本亞門さん、武田園子さんらとのオンラインミーティングの様子

マスク製作のプロセスと工夫

宮本さんと武田さんから説明を受けた学生たちは、マスク製作に先駆けて、舞台のシナリオや舞台進行上、重要な役どころである少年たちの心情の理解を深めるため、自身の親に対する思いや考えについて話し合い、製作の手がかりを探りました。

マスクは、劇中の主人公を含む少年たちがビニール袋や紙袋などの廃材を利用して作るという設定のため、即興性や瞬発性が感じられる製作物を求められました。学生たちはグループに分かれて事前に提供された材料や、自ら収集した学内の廃材、自身の不要となった帽子などを使ってマスクの試作や製作を進めました。

グループに分かれてのマスク試作の様子

ビニール袋や紙袋などの廃材を利用して作るという芝居の設定に合わせてマスク製作を進めました

舞台衣裳ならではの配慮やデザインの重点

マスクには人間の頭部や顔への機能的配慮や、演者の舞台上での演技や激しい動きへの構造的な耐久性のほか、芝居や歌唱などの舞台表現を妨げないか、舞台照明が当たった時の見え方など、日常生活で身にまとう衣服とは異なる、舞台衣裳ならではの配慮が必要でした。さらに観客が登場人物の役柄や性格を理解するのを助け、舞台効果の一要素になるという舞台衣裳独特の重要な要素にも寄り添い、学生たちはおよそ2週間という限られた時間の中で、表現豊かでバラエティーに富んだ16個のマスクを作り上げました。

プロジェクトから学んだ舞台衣裳の重要性

プロジェクトに参加した学生たちは、公演前日の11月22日のゲネプロ(衣裳付き最終稽古)で初めて自身が製作したマスクを演者が身につけて演技する様子を見学しました。本プロジェクトでオペラの原作や演出に触れ、実際の舞台で使用されるマスクを製作するという実践的取り組みを通じて、演技や演目を引き立てる舞台衣裳の重要性を学ぶ貴重な機会となりました。

東京・日生劇場でのゲネプロ鑑賞の様子。観客席から舞台衣裳としてのマスクの出来栄えを確認しました

【公演情報】

『午後の曳航』
オペラ全2幕(2005年改訂ドイツ語版 日本初演)
日本語字幕付原語(ドイツ語)上演
原作:三島由紀夫
会期:2023年11月23日(木)~26日(日)
台本:ハンス=ウルリッヒ・トライヒェル
作曲:ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ
演出:宮本亞門
主催:公益財団法人東京二期会
共催:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

  

関連リンク

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