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細田守監督との対話形式によるアニメーションの特別講義を開催


細田守監督。代表作に「時をかける少女」(2006)「サマーウォーズ」(2009)「おおかみこどもの雨と雪」(2012)「未来のミライ」(2018)など多数。最新作は「竜とそばかすの姫」(2021)

  

9月16日、八王子キャンパス レクチャーホールで、アニメーション映画監督の細田守氏の特別講義が行われました。「今の大学生がどんなことを考えているのか話を聞いてみたい」という細田監督からのオファーに、グラフィックデザイン学科の野村辰寿教授と芸術学科の小川敦生教授が呼応して実現したものです。

特別講義は「細田守監督と話そう」と題し、全学科全学年を対象とした公開授業として行われました。3・4限に行われたグラフィックデザイン学科主催の講義では学生が実際に制作したアニメーションなどの「ビジュアル作品」について、5限に行われた芸術学科主催の講義では学生が考案したアニメーションの「物語」について、事前募集で選ばれた学生が登壇してポートフォリオや企画案を提示。それを軸にして細田監督との対話を行いました。登壇した学生、聴講した学生たちは、日本を代表するアニメーション映画監督の考えに直にふれ、有意義な時間を過ごしました。

  

グラフィックデザイン学科主催の講義では学生が制作したグラフィック作品のポートフォリオをもとに対話

作ることをやめられない、アニメーションの「魔力」

3・4限はグラフィックデザイン・油画・日本画・情報デザインから9人の学生が選ばれ、細田監督が待つステージに1人ずつ登壇し、中央のスクリーンに投影した自身の作品やポートフォリオを見てもらいながら15分の持ち時間で対話しました。監督はどういう意図や背景があって制作したかといったところから、作品を組織で作ることについてや作品で社会問題を取り上げることの是非、CGやVFXなどの最新技術を身につけるべきかどうかなど、一人ひとりの学生が日々感じている問題意識を丁寧に聞き出しました。金沢美術工芸大学油画専攻から東映動画(現 東映アニメーション)へ進んだ監督自身の経験を踏まえたアドバイスを学生に送るなかで、リアリティが求められる日本の現代社会で感じる表現の不自由さや、絵画やアニメーションの存在理由にまで発展していきました。登壇した学生は監督のお話に深く耳を傾け、聴講した学生たちもうなずいたり熱心にメモを取ったりする姿が見られました。

「リアル以上の臨場感を感じることができるところが絵画やアニメーションの良いところ。気持ちを表現するのに時間をかけて表現したからこそ伝わる何かがある。まだまだ技法の特性を使って表現されていないことがたくさんあるのではないかと思うと、作ることをやめられない。アニメーションにはそういう『魔力』がある」(細田監督)

  

芸術学科主催の講義では学生が考案した「まだ出来ていない物語」の企画について対話

監督との出会いが、学生の制作の方向性を変えるきっかけに

5限目はアニメーションの「物語」の企画を立てるという事前募集の課題で、芸術学・グラフィックデザイン・油画から5人の学生の企画案が選ばれました。1人につき最低4~5件という条件での募集でしたが、中には30件もの案を出した強者も。40字程度の短い文章で書かれた「まだ出来ていない作品」の企画案から監督が面白いと思ったポイントを挙げつつ学生の説明を促し、その構想から人となりまで深掘りしました。「話を聞きながら学生一人ひとりのキャラクターを掘り起こしていくと、『この人はこういうところに価値を感じているんだな』と素敵に思えてくる。思わぬ顔が出てきたりするのも面白い」(細田監督)

細田監督も学生も15分の持ち時間では話し足りない様子で、少しずつオーバーした結果、5限終了後まで対話が続きました。登壇した学生、聴講した学生たちは、日本を代表するアニメーション映画監督である細田さんのアニメーションや物語に対する考えに直にふれることができ、有意義な時間を過ごしました。登壇した学生のひとりは「自分の作品を見てもらえてコメントをもらえたことも良かったが、他の学生の作品に対するコメントを聞けたことも良かった。自分の今後の制作の方向性が変わっていくのではと感じた」と話しました。

「美大の良さはアートとデザインというまったく考え方の違う表現を志す学生が、同じ場所で話したり学べたりするところ。お互いの表現の幅を広げるのにとても良い環境。タマグラアニメーションは昔からすごい作品をつくる人材を数多く輩出していて、それは一朝一夕では成し得ない素晴らしいこと。学生の皆さんはぜひこの環境の中で、いろんなアニメーション表現の可能性を追究して、自信をもってどんどん作品にして見せてほしいと思います」(細田監督)

*今回の特別講義は教室の収容定員を大幅に超え、2学科総計で600人近くの応募があり、受講は抽選となりました。聴講できなかった学生に向け、後日、学内限定でアーカイブ動画を配信する予定です。

  

関連リンク

「スタジオ地図」Webサイト 細田監督紹介ページ別ウィンドウリンク
グラフィックデザイン学科 紹介ページ別ウィンドウリンク
芸術学科 紹介ページ別ウィンドウリンク

  

写真左から野村教授、福島颯汰(グラフィックデザイン3年)、高橋李空(日本画1年)、袴田真子(大学院日本画2年)、藤原日奏(グラフィックデザイン4年)、細田監督、白鳥花(情報デザイン3年)、小曽根里咲(油画2年)、石井柚衣(グラフィックデザイン4年)、木下友里(油画1年)、小野真理恵(油画1年)

写真左から小川教授、網代瞳⼦(芸術学1年)、チョウイク(大学院グラフィックデザイン1年)、高橋慶⽣(芸術学3年)、細田監督、望月花妃(芸術学1年)、久田亜⾐⼦(油画2年)