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プロダクトデザイン専攻第2スタジオ「屋台トーク」産学パートナーの企業やNGO、昭和大学・早稲田大学の先生らがトークイベントに参加


2019年5月16日(木)~18日(土)、八王子キャンパス アートテーク1階ギャラリーにて、プロダクトデザイン専攻第2スタジオの3年生、4年生ならびに卒業生によるトークイベント・作品展示会『第2スタジオ屋台トーク ~デザインの、マルチステークホルダーダイアログ~』が開催されました。同専攻は、2年次の後期から専門領域によって3つ分かれるスタジオ制で、今回イベントを行った第2スタジオは、多様な領域に対応するゼネラリストとしてのデザイナー育成を掲げています。会場には、これまで取り組んだ課題やプロジェクトの作品が展示されました。「本イベントは、第2スタジオとして8年間試行錯誤しながら開発してきた教育内容を、各展示ブースで学生が作品解説を行う『屋台トーク』を通して多くの方々にご覧いただき、“外から見た第2スタジオ”を浮かび上がらせたいという思いから企画しました(プロダクトデザイン専攻・大橋由三子教授)」。

産業界から多数の来場者を招いてトークイベントを開催

5月17日は『屋台トーク』会場の隣でトークイベントを開催したため、国内メーカーのデザイン部門を中心に、技術開発部門、人事部門の方々など多くの来賓が訪れました。イベントでは、第2スタジオを2017年に卒業した伊藤忠インタラクティブ株式会社の和嶋玲美さんが、次のように開会の挨拶を行いました。「ビジネスシーンにおいて、デザインに対する関心と期待が高まっています。デザインといえば表面的なビジュアルを指すように思われがちですが、社会でのデザインの捉え方はまったく異なり、ものごとの捉え方や考え方を指します。私は第2スタジオでそれを学び、課題設定から解決に導く力を身につけました。これはデザインだけでなくどの分野でも役立つ力です。ここで学ぶ学生の皆さんは自信を持って良いでしょう」。

産学共同研究実施企業や、連携授業を行った大学の先生・学生とトークセッション

トークイベントではこれまで第2スタジオと産学共同研究を実施した企業やNGO、また連携授業を行った昭和大学と早稲田大学の先生をお招きし、両校との連携授業の成果発表とトークセッションが行われました。昭和大学の三橋幸聖講師と早稲田大学の島岡未来子准教授は、連携の経緯や意義について、次のように語りました。「学内だけの学びには限界があります。異なる専門性が合同で授業を行うことで、新たな学びや気づきを得ることに期待しました。その成果に、学内外から高い評価と今後への期待が得られています」。
(参照:・昭和大学×多摩美術大学 医療現場の課題をデザインで解決別ウィンドウリンク多摩美×早稲田大で新しいビジネスモデルを考える別ウィンドウリンク

連携授業での経験からこれからのデザイナーの役割について考える

続いて、連携授業に参加した第2スタジオの学生のほか、早稲田大の学生1名も加わって、チームにおけるデザイナーとしての役割について考えました。
多摩美の学生は、異分野の学生と行った共同作業の難しさについて次のように語りました。「昭和大の学生が持つ専門知識は、デザインを考える上で大変勉強になりました。ですが、共通言語が異なるため互いに言いたいことが伝わりづらく、コミュニケーションの難しさを感じました」「早稲田大の学生とブレストを行ったとき、何度かぶつかることがありました。例えば、どんどんアイデアを出していこうという初期の段階で、冷静に『それは現実的ではないだろう』と返されると、戸惑ってしまったのです」。対して早稲田大の学生は、次のように応えました。「多摩美の学生から出されるアイデアに、正直『詰めが甘いんじゃないか、根拠が弱いのではないか』と思うことがありました。僕たち理系の研究においてはまず批判的な目で物事を見ることを訓練されているからです。ですが、『起業しよう』というときに批判していても始まらないと気づいて、僕たちのグループでは互いに理解し合って、コミュニケーションを図りながら進めることができました」。それを受けて島岡先生、大橋先生は、「こうした発想プロセスの違いから生じる違和感こそ、まさに体験してほしかったことです」と、手応えを語りました。「異なる分野の者同士、仲間割れするなど困難もあったと思います。学生は連携授業を通して、今までとは違った視点や自分の持つ才能に改めて気づいたことでしょう。ここでの発見は、今後社会に出て複雑な課題に対し多様な人たちと取り組んでいくなかで、とても貴重な経験になると思います(島岡先生)」。
また、デザイナーが社会で求められる役割について来場者の方にマイクを向けたところ、「社会では、企画、設計、エンジニアといったそれぞれの役割があります。そのなかでデザイナーには、広い視野で全体を見渡し、それぞれの思いを汲み取って異なる分野をつなぐ役割が求められていると感じています」と、実体験を交えた意見が飛び出し、連携授業からデザイナーを取り巻く客観的評価の話にまで発展しました。

現在の社会においてデザインを学ぶ意義とこれからのデザイナーの役割

最後に、大橋先生から多摩美の学生たちへ、次のような問いを投げかけました。「いま、世界のさまざまな業界がデザインに注目しています。みんながデザインに興味を持ち、みんなが学んだら、あなたたちの存在価値はどうなると思いますか?」すると学生は、「あらゆる専門分野の方がデザインを学んでいる現在において、私たち美大生がデザインを学ぶ意義は、さまざまな分野の専門性に秀でた人同士をつないでいく、コミュニケーションの架け橋の役割を担うことにあると思います」と力強く答えました。さらに続けて「美大生が学ぶデザインはビジュアルの良さが重視されているイメージが強いですが、日々社会のなかで、デザインがどう生かされていくべきなのかを考えているということを、知っていただきたいです。絵画やイラストレーション、造形などのビジュアルから学んできた私達だからこそ、誰かに伝えるためのデザインを考えることができるのだと思います」と、意見を述べました。
イベントを終えて、大橋先生は、この日の成果をこう振り返りました。「いま、“デザイン”という言葉の再定義が必要になっていると思います。美術大学がデザインを語るとき、その専門性の高さだけを話題にするのは事実とは異なり、もったいない。デザインを学ぶ過程には、常に複数の視点で物事を捉え、求められる最適な解決策を具体的に提示する力を養う大切な要素が含まれていると考えています。参加くださった皆さまからは『次回また参加したい』という声をいただけましたし、また学生達にとっては、多様な価値観の人々と対話する今回の経験は、デザインを磨き上げる良い刺激になったと思います」。

『第2スタジオ屋台トーク ~デザインの、マルチステークホルダーダイアログ~』会場より
これまで産学共同研究を行った企業や国際NGOの方にも参加いただいたトークセッション
各学生展示ブースでは、「屋台トーク」として学生が来場者に作品を説明